気持ちのメモ帳

何故その作品を面白く感じたのか、日々考えた事を忘れないためのブログ。基本ネタバレなのでご注意を…考察はありません、全て妄想です。断言してる表現があったとしても、私は私が考えた事が必ず正しいとは思っていません。

MUSICUS 澄ルート感想 BADEND?いや、馨の音楽はここから始まる

澄ルート、所謂BADENDをクリア!

いややっぱりこのゲーム名作過ぎる…

凄く良い結末で、個人的にめちゃくちゃ刺さりました…

よくBADENDと言われているルートなのだけど、私的には、馨はここから這い上がるんじゃないかなって思うんです。

馨が本当の意味で自分の音楽をやるルートって、ここなんじゃないかな。

以下本編

※音楽もやった事ねぇやつがあーだこーだ偉そうな事書いてんなコイツ…と思うかもしれませんが、なぜ面白いと感じたのか、考えをまとめるための自分用ブログなので、許してください、本人はにわかだと自覚してます(笑

■馨が行きついた答え

 

頭から他の作品の話題で申し訳ないですが…

映画大好きポンポさんで「その映画を見てもらいたい誰かのために作ればいいんだ、そうする事で作品が引き締まる」という台詞があって、そのおかげでジーン君は映画を完成させ、ニャカデミー賞を獲得したわけだけど

 

澄ルート序盤で

僕はこのバンドは三日月の力を発揮させればきっとうまくいくと思ってて、その事ばかりを考えていた。

という台詞にあったように、三日月の良さを届けたいという気持ちもあって馨は曲を作っていた、だからこそ、彼女の魅力が詰まった曲でファンに刺さっていたわけだけど

澄ルートに入ってからの馨は、漠然とした良い曲を、真の音楽を、という存在しない誰かに届けるための曲で、あの頃の馨には、自分も、ファンも、澄も、何も見えてない。

だからこそ八木原さんも受け入れなかった。

 

じゃあ、どん底まで落ちた馨は誰に届けるための音楽をやるべきなのか

ラスト

僕は僕の内側に住む悪魔のような何かのためにだけ曲を書けばいい、きっとそれが僕が望んでいた形だったのだろう

という台詞

 

四月は君の嘘で、音楽がきっかけで打ちのめされてた主人公が、この気持ちは音に込めるしかないんだと音楽で立ち上がったように

 

映画大好きポンポさんで、ジーン君が映画の中に自分を込める事で、マジョリティへ一矢報いたように

 

吉宗さん(マブラヴ原作者)がトータル・イクリプスに自分を込めて、それを面白いと言ってもらった事で辛い出来事を乗り越えたように

 

澄が死んで、しかもそのきっかけは全て自分にあって、迷惑をかけてばかりの何も生み出さない自分は生き残って、そんな生きる意味なんか見つけられない状況で、馨が音楽に全て込めるんだという結論になったのは、もう、本当に納得、というかこれしかないと思うんです。

 

■人に刺さる作品を作るには

ポンポさんや、四月は君の嘘でも、人に刺さる作品を作るのに大切なのは、自分とどれだけ向き合うか、そこが大事なんだと、そういう事が描かれてる。

じゃあ、その自分と向き合うためにはどうすればいいの?という所で、ジーン君(ポンポさんの主人公)が自分の映画を完成させるために言った台詞

捨てたものが足りない

澄が亡くなった時に私が思い浮かべた台詞でした。

 

馨も言ってますよね

僕には大事なものは一つしかない。きみから見れば僕はおかしなものに取り憑かれているだけかもしれない。僕はそれでいいんだ、でも君は違うだろう?

世の中には、人間らしいまともな幸せってやつがあるんだろう。僕と一緒にいるというのはそれを全部諦めるということだ。もう一度、よく考えた方がいい

 

僕はとっくに捨ててる

 

でも馨は捨てた気になっているだけで、失ってないんです。

いつだって自分を受け入れてくれる実家も、お金も、音楽をやろうと言ってくれる金田も、有名になっても忘れないでいてくれる三日月も、きっとめぐるや風雅、今はカフェを経営してる篠崎だって、言えば助けてくれる。

 

でも澄の死によって、馨は本当の意味で大切なものを捨てた(失った)んです。

 

だからこそ、自分と向き合う事が出来るようになった。

 

最近読んだメイドインアビスっていう、作者の性癖がこれでもか!!っていうほど詰め込まれている作品があるんですけど、この作品に詰め込まれてる内容って、言葉にするだけだとドン引きされるものばかりだと思うんです。

人に好かれようと思って出来る事じゃないし、たぶん色んなものを捨ててる。

だからこそあんなに面白い!!面白いし、すっごく刺さって来る。

それはきっと作者が大好きなもの、ロリだったり、ケモナー要素だったり、世界の残酷さの中で光る主人公達の生き様とか、世界ってこんなにクソなのに美しいんだぜって、そういう伝えたいもののために。

これって作者が好きなものを、最大限の魅力で描き切るために、自分に向き合うという事を全力でやった結果だと思うんですよね、それで物凄い人気になって。

そしてこの作品が人気になっている今の現状そのそのものが、平尾隆之監督(ポンポさんの監督)が言う"マイノリティがマジョリティーに一矢報いる"言葉そのものになっていて。

 

このマイノリティがマジョリティに一矢報いるって、個人的にロックと同義語だと勝手に思っているんですけど、弥子ルートがまさに分かりやすくこの形になっていると思います。

 

映画大好きポンポさん、四月は君の嘘、MUSICUS!は同じ事を描いていると感じていて、音楽をすること、物語を作ること、クリエイターの生き方に関して、色んな作品が同じ結論に行き着くというのは、きっとそういう事なのだろうと。

 

捨てて捨てて捨てて、多くのものを失ったからこそ、最後に残った本当の自分に気づいて、その馨が自分を込めて本気で作る歌は、振り切った、だからこそ、人の心の奥底に刺さるような音楽が出来るんだと思います。

 

この文脈で見ると、よく言うような"ロックは生き様"って言葉も、凄く納得です。

 

澄ルートはBADENDだと各所書いてあって、確かに澄が亡くなった事とか、ここまでも落ちっぷりというのはそうなんだけど…

でもきっと、この結論に至った馨は、色んな作品でそうだったように、ここから立ち上がるんじゃないのかなと思います。

 

■最後に

それにしても、澄ルートは是清の生き様を馨がなぞる(?)というような話だった所で、澄が亡くなった後に"ぐらぐら"がかかるのは、歌詞的にも、これまでの物語的にも意味があり過ぎますよね…

是清さんも大切な人を失ったっていう、同じような経験をした意味にも見えるし(昔ヒモをやってたのに繋がる…?)、馨が初めて"ぐらぐら"を聞いた時に刺さったのは是清の感情がこもっていた歌だったから、だからここから目覚めた馨の音楽は人を魅了する、というような意味にも考えられる。

それぞれのルートが音楽で締められるMUSICUSですけど、今回の"ぐらぐら"もシナリオに凄くマッチしてて本当に素晴らしかったです…!!

マブラヴの原作者、吉宗綱紀さんが「物語は人の成長を描いてるわけだから、世界がどうこうじゃなくて、人が成長した所で終わるんだ」(うる覚え)という事を言っていたけど、そうやって考えると、あそこで終わったのも頷けますね。

 

 

個人的には最初か最後にやるべきだったなぁと感じるルートでした。

さあ、最後はついに三日月!!友達からも凄く良かったとオススメされたルートなので、めちゃくちゃ楽しみ!

 

追記

最後のEDで流れるno titleは、是清が馨に子供が演奏したピアノを聞かせたシーンを思い出させるなぁと、あれを視聴者にも同じ感覚を味合わせたいのかも、とそんな意味に感じました。

個人的にはその意味でも、このルートはBADENDではない気がします。

 

さらに追記

ラスト、三日月の象徴である月が馨を見下ろしていて、その三日月は音楽の才能で溢れている

そんな月を見て馨は

ああ、なんだって、こんなに美しいんだろう!

こんなに世界は残酷で、生きるのに意味なんてなくて、音楽は頑張っても頑張っても、報われる事はなくて、そんな世界なのに、そんなクソみたいな世界なのに、そこにある音楽は、自分の大切な人を二度も殺した音楽は、この世界は、こんなにも美しいと

 

楡さんの

生きる事に意味なんてない、だが価値を生む事は出来る

という言葉を思い出します。

 

きっと馨にとっての人生の価値は、音楽と共に、ここから生まれるんじゃないかな。