気持ちのメモ帳

何故その作品を面白く感じたのか、日々考えた事を忘れないためのブログ。基本ネタバレなのでご注意を…考察はありません、全て妄想です。断言してる表現があったとしても、私は私が考えた事が必ず正しいとは思っていません。

『ガールズバンドクライ』8話 誰にもなれない私だから、自分が自分であるための存在証明

 

今までの総決算というか、端的に言って神回。

ここから始まるトゲナシトゲアリ。

 

まずこの作品が何を描いているのかって結論を頭において置きたい。

『井芹仁菜(トゲトゲメンバー)の存在証明』だと、個人的には思います。

同じ文脈で以前書いたブログの記事↓、ガルクラと同じくバンドを題材にした作品『MUSICUS!』の1ルート。

memommo.hatenablog.com

 

「人生このままでいいのかな」っていう漠然とした不安って、きっと大なり小なり誰しも経験があるんじゃないかなって、安定した大企業の正社員で働いてる私でも、時々思います。

夢や目標がない、あっても安定した生活が手放せない、才能がなかったら、このままじゃ何も残せないんじゃ、やりたい、怖い、でも、人生終わるかも…

勝手な想像ですが、安定していない職業の人たちって、この不安は私なんかには想像出来ないくらい現実で、大きいものなんじゃないかって思うんです。

 

でも、だからこそ桃香は退路を断った。

迷わないように、前だけに進むために。

婆さんになってもこのメンバーでバンドをやるんだ。

3人の友達の人生背負って、高校中退して、東京に出て、そして、現実に直面した。

やりたい音楽と、売れる音楽。

「今は耐えよう、いつかのし上がって自分たちのやりたい事が出来るようになる。」

 

でも、桃香だけは曲げられなかった。

 

彼女にとっての音楽は、好きなものを好きだと言える、自分が自分であるためのものだったから。

トゲナシトゲアリ 空の箱 (井芹仁菜、河原木桃香) 歌詞 - 歌ネット

やけに白いんだやたら長いんだ

コタエはだいたいカタチばかりの常識だろう 指先が震えようとも
正解は無いんだ負けなんて無いんだ あたしは生涯 あたしであってそれだけだろう

 

 

きっと彼女からしたら私(筆者)は誰かになれてるんです。

空気を優先出来て、やりたい事と現実の真ん中で安定を選べて、顔に出さず、思った事は口に出さず、笑顔を浮かべる。

本音を見せず、形だけの自分を作って、接客業10年以上やっている身としてはこんなの朝飯前です。

まるで悪いように書いてしまったけれど、私はそれが正解だと思っていますし、多くの人はきっとそうやって生きているんじゃないかな。

 

でも、そう思ってたとしても、『空の箱』は私に刺さりましたし、それを写した桃香や仁菜の生き様には共感や憧れを覚えてしまう自分もいる。

音楽にはきっと、そういう力があるんだと思います。

 

だからこそ桃香は音楽の道を選んだ、自分が自分であるために、まっとうじゃない自分が、ここで生きてていいんだって、それを証明するために。

 

でも現実は甘くない、絶対に辞めないっていう目標のために、続けるために、自分を偽れと、でも曲げられなかった。

3人をこの道に連れてきたのは自分で、間違っているのは自分で、夢を見てたのは自分で、だから諦めようとした。

 

諦めようとしたのに、井芹仁菜が現れた。

イジメられて、作った笑顔を向けられて、これで手を打てと、これが正解なんだと、指先が震えるような、形ばかりの常識に押しつぶされそうになって、でも、自分は自分でいいんだ、納得なんか出来るはずがないこの気持ちは間違ってないって、ダイヤモンドダストの、桃香の歌に救われた井芹仁菜が。

 

好きなものを、自分を曲げない、曲げられない仁菜は、まるで過去の自分のようで、だからあの頃を思い出して、バンドを組んだ。

「言ったろ、仁菜の歌声が好きだって。ひん曲がりまくって、こじらせまくって、でもそれは、自分に嘘をつけないからだろ?弱いくせに、自分を曲げるのは絶対に嫌だからだろ?それはさ、私が忘れていた、私が大好きで、いつまでも抱きしめていたい、私の歌なんだ。」

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仁菜をイジメてた(?)ヒナはダイヤモンドダストに。

本性を隠して、仁菜を追い詰めた、あの気持ち悪い笑顔を振りまいて、よりにもよって、そのヒナから救ってくれたダイヤモンドダストで『空の箱』を歌ってる。

あの笑顔で、「あたしは生涯あたしである」と。

ウケがいいように、2番のサビまで付け加えて。

どの口で…!!と、このもやもやというか、気持ち悪さは本当に凄いです。

でも、先日公開されたアレンジ、かっこいいんですよね…良いと思う自分、気持ち悪さを感じる自分、聞いていると情緒がおかしくなります。

diamonddust.lnk.to

 

仁菜の道は、桃香の道は、生き方は、歌は間違っていないと、それを証明するためには、プロっていう同じ道で成功してやるんだって。

 

でもダイヤモンドダストだって最初は違った。

「最初は皆言ってた、アイドルバンドなんてふざけるなって、自分たちの歌をやるだけだって、誰も聞く耳を持たなかった。でも、現実はプロが絶賛しても売れないものは売れない。鼻で笑ってしまうようなものが大ヒットしたりする。それがこの世界だ。その事実が少しずつプレッシャーになってくる。そして選択が訪れる、拒否すれば続ける事が出来ないという選択だ」

一度現実を見た桃香は、過去の自分である仁菜が同じ道を歩んでいくのが怖かった、そのままでいて欲しかった、現実に押しつぶされて、諦めてしまった自分にはなって欲しくなかった。

現実と折り合いをつけて、自分を偽ったダイヤモンドダストには、なって欲しくなかった。

 

でも、桃香の歌に救われた仁菜は叫ぶ。

自分を重ねるな、私の気持ちはどうなる、何ビビってんだ、あなたの歌に救われてここまで来たんだ、お前が諦めてんじゃねぇ!!あたしに逃げるな!!と。

胸ぐらを掴まれる桃香の顔がまた何とも言えない表情で凄くいい…本当に、表情の豊かさがCGアニメとはとても思えません。

またここで桃香を引っ叩いてしまったのが、あいつらと同じ事をしてしまったのが今後どう影響するのか、個人的には楽しみです。

 

その後の現ダイヤモンドダストメンバーとの別れが本当に良くて…

上でも書きましたが、『空の箱』のアレンジめちゃくちゃかっこいいんですよね、アイドルバンドのアレンジとはとても思えないような。

だからこそ、桃香は叫ぶ。

「アイドルバンドなんだろ?後悔してないんだったらもっと可愛くやってみせろよ!!それがプロだろ!!次のフェス、あたしらも出るからな。そこで今日みたいな演奏やったら、お前らの客、全部持って行くからな!!」

その道は捨てたんじゃないのかと、自分が選んだ道を貫けと。

別れの言葉で、背中を押す言葉。

 

「私達後悔してないから!」

「これで上まで絶対行くから!」

「間違ってなかったって、言ってみせるから!」

「私達も絶対負けませんから、私達が正しかったって言いますから、間違ってなかったって、言ってやるからッ!!」

 

忘れてない、後悔してない、この道を選んで正解だったって、証明してみせる。

 

決戦はフェス、それぞれの存在証明をかけたライブが始まるわけです。

熱い…あまりにも熱すぎる…!!

 

 

 

そして流れる 『誰にもなれない私だから』

 

今回は特に刺さるEDです。

 

誰かの希望になれるなら 誰にも言えない痛み引き連れてさ。

ただ独りでも紛れもない自分を信じて 傷つきちるたび歌えばいい。

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誰かに染まれない誰にもなれない

夢だと思って笑ってみせた

忘れた弱さ悴んでいく

寂しいなんて言えるわけもない
さりげない会話すら傷つく心は

誰一人誰一人幸せにしない

ねぇ それでもまだ期待膨らむんだ

すれ違った嘘なんて全部捨てて
大逸れて ないよってただ聞きたくて 夢ばかりで幼くたって

日も変われないままだっていいんだ 君と歌っていたい
何度だって感情ばっか揺れ動いて 嫌われてきたけど このままで歩いて行くんだ 誰にもなれない私胸張ってさ
さよなら さよなら要らない全部

全部を消したら自由になれる?

煩い脳内誰かの言葉 捨てたら自分を生きれるのかな
立ち止まる事ばかり覚えてしまった

あれでもないこれでもない歪んでしまった 後悔ばかりで夜が終わらないや 朝焼けには誰かいて心躍る
代償なんて 困難だって超えていくって

決めたのに壊したくなって 想像の中じゃ足りないくらいに 君と叶えてみたい
感傷ばっか なんで心に壁を つくってしまうんだろう

誰かの希望になれるなら 誰にも言えない痛み引き連れてさ ただ独りでも
紛れもない自分を信じて 傷つき堕ちるたび歌えばいい