個人的な大傑作映画『映画大好きポンポさん』を制作したCLAPさんの新作、『夏へのトンネル、さよならの出口』観てきました!
一応観てない方向けのあらすじ
ウラシマトンネル――そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。
ただし、それと引き換えに……
掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。
これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語。
クッソネタバレ有ります、ご注意を。
カオルの家族は、妹の死をきっかけにお母さんは家を出て、お父さんは酒に明け暮れ…といった感じで崩壊
漫画家を目指すも家族に反対され、田舎へ送られてきたあんずと一緒に、欲しいものがなんでも手に入るという噂のウラシマトンネルへ
カオルは「過去」に失ってしまったもう手に入らない妹を
あんずは「今」は持っていない漫画の才能を手に入れるため
外との連絡は取れるのか、時間はどの程度ズレているのか等々、二人はトンネルの攻略を目指し共闘をしていきます。
結果として、数時間中に入るだけで1年間経ってしまう事が分かり、さらに外との連絡もつかないという…しかもどの程度中にいれば欲しいものが手に入るのかも分からない、今を犠牲にしてまで本当にトンネルへ入るべきなのか?という中で、二人のラブストーリーが描かれていくのですが、トンネル攻略も佳境、そんな中でお父さんが新しい奥さんを連れて来ます。
カオルは自分の人生をかけて家族の輪を取り戻そうとしている中で、お父さんは新しい家族を作ろうとしている
まあ、受け入れられるわけがありません。
主人公は逃げるようにトンネルへ向かいますが、外の時間で5年以上が経過する中、トンネルの中でついに妹と出会います。
でも、そこにはトンネルの入り口で捨てたはずの携帯も一緒に置いてあり、携帯を手に取ると、届かないはずのメールが。
漫画家になって、賞を取って…でも、自分の漫画を初めて褒めてくれたあなたはいないと
そこにはカオルがトンネルの中にいた5年の間、あんずが孤独の中、夢と今へ向き合っている様子が、カオルへ向けたメールで綴られています。
ここの携帯が置いてあるっていうのが、彼が本当に失ったものはあんずだったという意味になっていて、それに気づいた主人公が出口へ走っていくシーンが凄くエモかった…
ただこれ、カオルは結局お父さんと同じ選択をしてるんですよね。
あんずが自分の大好きだった祖父と漫画家の夢を失いかけて、それでも前に進んで夢を掴んだように
お父さんが家族を失って、それでもこのままではいけないと前を向いて新しい家族を迎えたように
あんずはカオルに今へ向き合って欲しかった
それはあんずがカオルと出会った事で、今の大切さをカオルに教えてもらったから
カオルは妹を失った時に過去へ向いてしまった事で今を失った
だからこそ、カオルを失ったあんずは今と向き合い続ける事で、カオルにもらったものを返したかった
ここは傘がその象徴として描かれていましたね
本当に大切なのは、過去を受け入れ、前を向き続ける事なんだと。
近年稀に見る凄く良いボーイミーツガールな作品で、本当に素晴らしかったです!
ちなみにこれ、お父さんは前を向いて歩みだした結果、自分の選択でさらに家族を失う事になってるわけですけど…そういう意味ではお父さんが一番可哀想だなと…特典小説でその後が描かれてましたけど、主人公はもうお父さんに未練なさそう…(笑)
・最後に
今作、ポンポさんでも見られた実写映画的な演出が多く、かなり「映画」という媒体に力を入れてるのが分かります。
特に時間の経過演出が本当に上手い…共闘を進めていく中で二人の仲が進展していくシーンや、カオルがトンネルの中にいた時のあんずの5年間を描いてる所なんかは本当に素晴らしかった…エモすぎです!
ちなみに上映時間が1時間半なのですが、これは映画大好きポンポさんに出てくる「今の視聴者に2時間というのは長すぎる」という考えに影響されてるのかなと、同じ松尾プロデューサーですし、なので
この流れが続くのなら、CLAPさんが自社制作映画の1本目にポンポさんを選んだ所に凄く意味が出てきますよね
今後も大注目の制作会社さんです!